ホラーな夢
私の普段の夢にはフルカラーで色が付いている。割合から言うと色のない夢を見る人が多いとか。
悪夢の時だけ白黒もしくはブルーグレーの濃淡で夢を見る。
忘れられない夢。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
全て白黒の音のない街。
手漕ぎのボートのような、カヌーのような細長い舟が十数人の老若男女を乗せて、宙に浮いている。船頭らしき笠を被った男が舳先で舵を取っている。
モノクロの街は昭和の時代のように古呆け、コンクリート製の電柱が狭い路地に沿って延々と続いている。
舟は丁度その電柱を1メートル程眼下に見下ろす高さの宙を、川に浮かんでいるのと同じようにするすると進んでいる。
船頭が「そこだ」と静かに言う。
乗客の中の一人から「ああ…」と溜息のような声が漏れる。
舟の真下の路地を乗用車が猛スピードで走って来て電柱にぶつかる。フロントグラスが粉々に砕け散り、運転手の上半身が枠だけになったフロントからボンネットに飛び出す。泡立ちながら運転手の口から流れ出る血。何かを掴もうとするかのようにもがきながら痙攣する手。
無音。無彩色なのに血の赤さだけは何故か感覚的に認識出来る。
最初に声を漏らした乗客以外は一言も発さず、皆ただその光景を無表情で見下ろしているだけ。
止まっていた舟が動き出す。いつの間にか目の下の光景が変わっている。
何度も同じように、舟は瞬時に場所を移動し、繰り広げられるのはいずれも誰かが命を落とす光景。
舟に乗り合わせた人々の最期の姿だと言う事が分かる。
船頭が「次だ」
と、私を顎で指す。
夢だと言う事は分かっている、目を覚まさなければ、起きなければ、自分の死に様を知ってしまう…
だが目が覚めない。舟はするすると進む。見たくない、知りたくない。
必死で固く瞼を閉じる…舟がゆっくりと止まる…
というところで脂汗で冷え切った体で目が覚めた。全力で走った後のように心拍も上がっている。ここ何年も息が上がる程走ったことなどない。心臓が痛い。
…助かった。見なくて済んだ。と思ったが、ベッドに座って暴れる心臓を宥めていると、ふと思いついた。夢で見た光景は全て事故現場だった。
…私の死因も事故だろうか…?
いや、ただの夢のはず…。
急に死ぬのは色々困るんだけどな…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ホラー小説ばかり愛好しているとこんな夢を見るらしい。
この夢の話をした友人から聞いた話に拠ると、霊の通り道は丁度地面から電柱より少し上くらいにあるとか言うそうだ。

悪夢の時だけ白黒もしくはブルーグレーの濃淡で夢を見る。
忘れられない夢。
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全て白黒の音のない街。
手漕ぎのボートのような、カヌーのような細長い舟が十数人の老若男女を乗せて、宙に浮いている。船頭らしき笠を被った男が舳先で舵を取っている。
モノクロの街は昭和の時代のように古呆け、コンクリート製の電柱が狭い路地に沿って延々と続いている。
舟は丁度その電柱を1メートル程眼下に見下ろす高さの宙を、川に浮かんでいるのと同じようにするすると進んでいる。
船頭が「そこだ」と静かに言う。
乗客の中の一人から「ああ…」と溜息のような声が漏れる。
舟の真下の路地を乗用車が猛スピードで走って来て電柱にぶつかる。フロントグラスが粉々に砕け散り、運転手の上半身が枠だけになったフロントからボンネットに飛び出す。泡立ちながら運転手の口から流れ出る血。何かを掴もうとするかのようにもがきながら痙攣する手。
無音。無彩色なのに血の赤さだけは何故か感覚的に認識出来る。
最初に声を漏らした乗客以外は一言も発さず、皆ただその光景を無表情で見下ろしているだけ。
止まっていた舟が動き出す。いつの間にか目の下の光景が変わっている。
何度も同じように、舟は瞬時に場所を移動し、繰り広げられるのはいずれも誰かが命を落とす光景。
舟に乗り合わせた人々の最期の姿だと言う事が分かる。
船頭が「次だ」
と、私を顎で指す。
夢だと言う事は分かっている、目を覚まさなければ、起きなければ、自分の死に様を知ってしまう…
だが目が覚めない。舟はするすると進む。見たくない、知りたくない。
必死で固く瞼を閉じる…舟がゆっくりと止まる…
というところで脂汗で冷え切った体で目が覚めた。全力で走った後のように心拍も上がっている。ここ何年も息が上がる程走ったことなどない。心臓が痛い。
…助かった。見なくて済んだ。と思ったが、ベッドに座って暴れる心臓を宥めていると、ふと思いついた。夢で見た光景は全て事故現場だった。
…私の死因も事故だろうか…?
いや、ただの夢のはず…。
急に死ぬのは色々困るんだけどな…。
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ホラー小説ばかり愛好しているとこんな夢を見るらしい。
この夢の話をした友人から聞いた話に拠ると、霊の通り道は丁度地面から電柱より少し上くらいにあるとか言うそうだ。

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